特集
コンサルタントの皆さまに過去にお手伝いした転職の中から印象に残る事例をご紹介していただき、エージェントが求職者のためにどんなサポートをしているのかをお伝えするこのコーナー。
今回は、株式会社マイナビ クリエイター統括部の宮本
早織さん(以下敬称略)に振り返っていただきました。
キャリアアップに不安を感じて始めた、10年ぶりの転職活動
――まずはAさんがなぜ転職活動を始めたのか、どんな悩みや思いを持っていたのかについて教えてください。
宮本:はい。当時Aさんは女性向けWebサービス会社に約9年勤めていましたが、今後のキャリアアップの道筋が見えず、不安を感じていらっしゃいました。上司の方からは「あと3、4年もすれば管理職になれる…」と言われていたそうですが、もちろん確証はなく、「年齢的に最後のチャンス」と感じ、転職先を探していました。
お会いする前に職務経歴書を拝見し、実務経験が豊富なこと、リーダー的ポジションで長らく働かれているということは理解しておりましたが、実際にお会いしてみてわかったのは、経歴書からは見えなかったコミュニケーション力をはじめ、能力、ポテンシャルと、どれも非常に高い方だということでした。
じっくりお話を伺ってみると、Aさんは自分の経験を生かしながら企業の拡大や成長に携われるような転職を望んでいましたので、Aさんの経験が事業課題の解決に生かせそうなB社さまの求人をご紹介することにしました。
B社さまは従業員の6割が女性ですので、最後の転職と意気込んでいたAさんが、女性として長く働ける環境なのではと考えたのもご紹介した理由の1つです。加えてAさんは「衣食住」に関わる話題に大変関心がありましたので、それに近しいコンテンツを扱えるB社さまはまさにAさんに相応しい求人でした。AさんもB社さまをご紹介した際の印象は良かったようです。
――そうでしたか。AさんにB社さまが相応しいと感じたとのことですが、そのB社さまについてもう少し詳しく教えてください。どのような人材を探されていたのでしょうか?
宮本:B社さまは、企業の課題解決のために、コンテンツ制作やシステム提供を行っている企業で、長らくある大手生協さまの事業を広範囲でお手伝いされておりました。この大手生協さまがWebで後れを取っているという課題をお持ちでしたので、B社さまは、専任としてこの課題を解決できる、アカウントディレクターを探していました。
――アカウントディレクターということは、プロジェクト初期のチーム編成から、最終的な成果物までコントロールできる人材ということですね?
宮本:そのとおりです。宅配サービスユーザーを募るサイトにおけるコンテンツ企画、コミュニティサイト、キャンペーンサイト、ECサイトなどのディレクション・制作、運用まですべてを任せられる、Webに特化したスペシャリストです。
これまでB社さまがお手伝いしてきた大手生協さまの制作物は、カタログや、広報誌など紙のコンテンツが中心だったので、それをWebコンテンツにして広めていきたいというご要望をお持ちでした。また、デジタル以外のメディアと連動したプロモーションもお願いしたいとのことでした。
――かなり求められるスキルが高いように思いますが、Aさんはアカウントディレクターとしての経験やスキルをお持ちだったのでしょうか?
宮本:経験もスキルも十分だったと思います。前職までで新規サービスの立ち上げを多数経験されており、コンテンツの運用、サイトの運用、チームマネジメント、関連会社との調整まで、必要な実務経験はほぼ兼ね備えていました。
それから、相手の立場や理解力を察しながらコミュニケーションが取れるのもAさんの強みでした。あるときは論理的に、またあるときはフィーリングで相手を上手く巻き込んでいけるような方でしたので、B社さまからの評価も高かったですね。一方でAさんも、一次面接での感触や面接で感じた雰囲気なども含め、元々印象の良かったB社さまを第一志望に考えるようになったようです。
――AさんはB社さまが求める、まさに相応しい人材のように思いますが、どんな支援をされたのでしょうか?
宮本: まずは、今回のB社さまの求人から予想される質問や、弊社独自で集めてきたB社さまで出される質問とその回答といった面接対策を行いました。10年ぶりの転職活動で面接に不安を感じていたAさんでしたが、この模擬面接で緊張はだいぶ和らいだようで、一次面接を通過することができました。
ただ、面接直後にB社の担当者さまにAさんの印象を伺ったところ、前職が事業会社だったため「クライアント相手のコンテンツづくりではなかった」ことや、健康と美やその延長にある旅といった女性向けの、趣向性の強いコンテンツに携わっていたため「ややジャンルに偏りがあるようにも感じられる」ことが少し不安とのことでした。
――選考途中で採用担当者の声が聞けるのは、エージェントを介しての転職ならではですよね。その「不安」については、Aさんにどうお伝えしたのでしょうか?
宮本: Aさんは、前職以前にWebディレクターとしてクライアントとやりとりしつつ、様々なジャンルのコンテンツ制作に関わった経験をお持ちと伺っていたので、二次面接では、そこをアピールするようにアドバイスさせていただきました。
また、前職では、Aさん自らが企画を立て、社内プレゼンを経てコンテンツに落とし込むという流れで仕事を進めており、そのような経験を持った人材は希少なので、自信を持って改めてアピールするようにお伝えしました。その結果、すぐにB社さまから内定をいただくことができました。
第一志望のB社に内定! そんなAさんに不安と迷いが…
――コンサルタントとして最適なマッチングのお手伝いをして、スムーズに内定を勝ち取ったというわけですね?
宮本:はい。ですが、ここからが大変だったんです。B社さまのほかにも私が紹介した1社と、他社エージェントが紹介した数社の面接が進行していたのですが、どの企業もAさんへの評価が高く、複数社から内定をいただいたことが、かえってAさんを悩ませることになりました。
「最後のチャンス」だからこそ、非常に悩まれたのだと思います。複数の内定の中から改めて、“やりがい”“働きやすさ”“給与”などで、どの企業が自分に相応しいのか迷われて、ついには「在職中の現職を退社して良いのか?」とさえ考え始めたようでした。
――B社さまが第一志望だったのにですか? Aさんはかなりのキャリアをお持ちですので、ビジネスの局面では、状況を整理して、優先順位をつけて、しっかりと判断できる方だと思うのですが…
宮本:第一志望とはいえ、一人になって考えてみると、いろいろと不安になるものだと思います。これは、キャリアを積んでいるかどうかに関わらずどなたでも言えることです。そんな求職者に寄り添うのも、コンサルタントの役割だと思っています。
――迷うAさんにどんなアドバイスをされたのですか?
宮本:内定をいただいたうちの2社は私が紹介した企業でしたので、その2社でしたらB社さまの方が、社風や業務内容という点でよりマッチしそうだというお話をさせていただきました。
また、もう1社はB to Bの制作会社で、年収はこちらの方が高かったのですが、AさんはB to Bでの経験がないことに不安を感じていらっしゃいました。一方、B社さまで任される大手生協さまはB to Cですので、そちらの方がこれまでの経験ともマッチするのではないかと思いました。
それらを踏まえて、改めてAさんが大切にしたいものを一緒に振り返ったところ、年収よりも、B社さまで課題解決して事業の成長に貢献する方が、やりがいがあり、その経験が一生ものの強みになると再確認したようでした。
さらにB社さまでは食、暮らし、女性、育児などといったコンテンツに携わることになりますので、Aさんの関心がある「衣食住」というテーマに携われることや、サービス利用者には女性ユーザーが多いため、女性の視点が生かせる点でもマッチ度が高いのでは、ともお伝えしました。
振り返りには少し時間がかかりましたが、私が紹介した求人や他社が紹介した求人と比較しながらも、B社さまが自分に最も適していると改めて思い直したようです。
面接後の“熱い”気持ちは熱いうちに…
――紹介先企業と求職者のことを深く理解して、求職者の気持ちを汲み、未来まで見据えてアドバイスされるのですね。何か秘訣があるのですか?
宮本:自分が紹介している求人であれば、どの求職者さまに対しても、面接が終わった時間を見計らって電話を入れ、より詳細なヒアリングをするようにしています。そこで、面接内容はどうだったか、会社の雰囲気や業務内容にどんな感想を持ったか、転職に対して求職者さまの思いがどう変化したかといった情報を聞き出します。
面接直後というのが実は、大切なんですよ。求職者さまが面接で感じたことを忘れないうちに、より生な声を引き出せるんですよね。また、すぐに企業側の採用担当者さまにも連絡を取って感想を伺い、“熱いうち”に求職者の次のステップに生かせるアドバイスをするようにしています。
――それは手厚いサポートですね。ところでAさんは他社の求人にも応募されていましたが、他社の紹介する求人でもアドバイスをするのですか?
宮本:他社の求人でも、求職者さまから連絡をいただければアドバイスするというスタンスです。ただ、こっちがいいあっちがいい、と私が決められるものではありませんし、他社の求人の方がマッチ度が高いかもしれない場合ももちろんありますので、コンサルタントとして客観的にアドバイスするようにしています。
Aさんとは、転職活動終盤、それはもう毎日電話をしていたくらいです(笑)。Aさんは当時まだ離職されていませんでしたので、面接は19時から20時あたりに始まります。ですので、電話で話すのはたいてい21時以降でした。
長時間にわたりましたが、このように可能性を一緒に考えることで、“寄り添う”ことができたと思っています。Aさんも、面接後の電話ヒアリングを何度もくり返したことで、ご自分がどのような道に進むべきか? どのような経験を積みたいのか? ということが明確になったとのことでした。
――なるほど。客観的に見て、求職者にとって最善の選択になるよう、お手伝いをしている、ということですね。
宮本:転職というのは、採用する側、される側の両方がハッピーになることが大前提。それを踏まえつつより良い転職・採用をお手伝いすることが、私たちエージェントの介在価値です。今回のことも当たり前の使命を果たしただけなのですが、毎日の電話にしろ、Aさんの背中を押してB社さまとのいいご縁を生み出せたことは、嬉しい限りですね。今後、B社さまでAさんが活躍してくださることを期待しています!
――宮本さんのようなエージェントが求職者に寄り添ってくれるのなら、本当に心強いですよね。本日はお忙しい中、ありがとうございました。
面接終了後の電話など、「そんなフォローまでしてくれるのか!」と、きめ細やかなサポートに感心するばかりのインタビューでした。宮本さん、これからも求職者のためにがんばってください!
- コンサルタントは、求職者の今の経験、経歴にあった求人情報だけではなく、未来のマッチ度までをも見据えてアドバイスしてくれる
- コンサルタントは一次面接、二次面接と、随時面接先に最新情報を取りにいき、求職者のステップごとで生かせるフィードバックをしてくれる
- 自社の紹介する求人ばかりでなく、他社の紹介する求人も含めて、客観的なアドバイスをしてくれるのが、良いコンサルタントである
※コンサルタントによってサポート内容は異なりますのであらかじめご了承ください。
宮本 早織(みやもと さおり)
2009年にマイナビに入社し約5年間、リクルーティングアドバイザーとして企業の人事担当者と様々な情報交換をして参りました。
そこで蓄積した業界情報・求人情報をもとに、登録者の皆様に役立つようなアドバイスができたらなと思っております。
バックナンバー 一覧へ
-
「会社との価値観が合わない」と苦しむ求職者を理想の企業と出合わせたコンサルタントの手法とは?
今回のコンサルタントは、株式会社ジンジブの草場勇介さん(以下敬称略)です。これまで築き上げてきたクライアント企業とのつながりの中から、求職者の意向にぴったりの案件を創出した今回のサポートを振り返っていただきました。
-
退職から1年以上が経過した40歳。苦戦していた状況を好転させたコンサルタントのサポートとは?
今回のコンサルタントは、株式会社ゆーらむの遠藤こづえさん(以下敬称略)です。40歳で離職期間1年以上の求職者の長所を見抜き、内定に導いたサポートを振り返っていただきました。
-
実務経験のない求職者が大満足したコンサルタントのチャレンジングなサポートとは?
今回のコンサルタントは、ヒューマンタッチ株式会社(現:ヒューマンリソシア株式会社)の岩崎晴香さん(以下敬称略)です。同社が得意とする建設業界へ実務未経験者を導いた、チャレンジングなサポートを振り返っていただきました。