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管理職に着任した際は、社内や社外の関係者に向けて着任のあいさつを行うのが一般的です。着任のあいさつは、自身の姿勢や方針を伝える重要な機会であり、チームワークや信頼関係に影響する可能性もあるため、内容には十分な配慮が必要です。
この記事では、管理職として押さえておきたい着任あいさつの基本マナーやスピーチとメールの例文、好印象を与えるコツを紹介します。
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Contents

管理職に着任した際は、担当部署のメンバーや関係部署、取引先といった社内・社外の関係者に向けて、スピーチあるいはメールなどで着任のあいさつを行うのが一般的です。
管理職としての第一印象が決まる重要な場面でもあるので、まずは基本的なマナーをしっかり押さえておきましょう。
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担当部署内に向けたあいさつなどは、管理職として仕事を始める初日に行うのが一般的でしょう。ただし、着任式や社外の会合などの場であいさつを行う場合は、着任日から数日程度前後することもあります。
メールであいさつをする場合は基本的には正式に着任(異動)が決まったタイミングで、社外宛てでは着任からできるだけ早いタイミングで送るのがマナーです。
注意点として、社内外の混乱を防ぐために、会社から正式な着任の発表がされていない段階であいさつをするのは避けましょう。
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管理職の着任あいさつでは、自己紹介のほかに管理職としての抱負やチームに対する期待を盛り込むことが重要です。具体的には、以下のような内容が基本の構成となります。
着任の事実と自己紹介 |
● 着任した部署・役職と氏名● (転職の場合)前職での仕事内容や実績 |
抱負や今後への期待 |
● チームの現状への敬意● 管理職としての方針や目標● 自身の意欲やチームに対する期待 |
締めの言葉 |
● これからの関係に期待を込めたあいさつ● 協力や支援をお願いする言葉 |
転職で管理職に就く場合、前職については、着任する部署で生かせる経験に絞って盛り込むと良いでしょう。そのうえで抱負などを述べれば、周囲からの信頼感や期待感も増します。
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これまでの経験や自身の方針を伝えることは大切ですが、関係者との良好な関係を構築する一歩を踏み出すためには、自己中心的な印象や威圧的な雰囲気を感じさせる表現は避けましょう。また、カジュアルすぎる言葉遣いや曖昧な表現も信頼度を損なう要因となります。
自己中心的な内容 |
● これまでの成果を主張・自慢する● 自身がやりたいことを一方的に話す● 前任者のやり方を否定的に評価する など |
威圧的に感じる言葉 |
● 「厳しくやります」● 「今のままではダメ」● 「必ず現状の数字の倍にしましょう」 など |
カジュアルすぎる言葉遣い |
● 「私的には~」● 「ぶっちゃけ~」● 「マジで~」 など |
曖昧な表現 |
● 「なるべく頑張ります」● 「~な感じで」● 「一応~」● 「多分~」 など |
着任あいさつというフォーマルな場面であることを踏まえ、仕事や周囲の人に対しての誠実な姿勢や信頼のおける人物であることを印象付けるような表現を意識することが大切です。
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ここからは、管理職の着任あいさつの例文を紹介していきます。以下は、スピーチであいさつを行う場合のシーン別の例文です。
担当部署などでのあいさつは、朝礼やキックオフミーティングで行うことも多いでしょう。朝礼や会議の時間内で行うあいさつなので、短く簡潔にまとめることを意識します。
また、主に部下に向けてあいさつをすることになるため、部下から見て親しみやすく信頼できる印象であるかを重視すると良いでしょう。
おはようございます。本日付で〇〇(部・課など)の〇〇(役職)として着任いたしました、〇〇(氏名)と申します。
これまでは〇〇(以前の部・課など)にて〇年間、〇〇(業務内容)を中心に従事してまいりました。今回新たにこのような素晴らしいチームに加わることができ、大変うれしく思います。
これから仕事を進めるにあたっては、一人ひとりの意見やアイデアによく耳を傾け、チームと共に私自身も成長していけたらと思っています。皆さんが力を発揮できる働きやすい環境づくりに努めてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。 |
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着任式など、よりフォーマルで多くの人が集まる場面であいさつを行う場合は、会社全体を意識した内容にし、部署内のみでのあいさつに比べて言葉遣いなども更にかしこまった表現にすると良いでしょう。
皆さま、本日はお集まりいただきありがとうございます。〇月〇日付で、〇〇(部・課など)・〇〇(役職)として着任いたしました、〇〇(氏名)と申します。
初めに、このような形でごあいさつの機会をいただけたことに感謝申し上げます。このたびの人事に関しましては、皆さまからの日ごろのご支援の賜物とありがたく存じますとともに、大役に身の引き締まる思いでございます。
着任にあたり、ビジネス環境が激しく変化する中で部門を統括する責任を痛感しております。これまでの経験を生かしつつも、事業を取り巻く変化に柔軟に対応する姿勢を重視し、部門の成長に貢献していく所存です。
今後とも事業の更なる発展に尽力してまいりますので、皆さまのご支援・ご鞭撻を賜りますようよろしくお願いいたします。 |
取引先との会合など、外部関係者に向けて着任あいさつをする場合、比較的カジュアルな会合では着任あいさつも固くなりすぎず簡潔に、式典などではより丁寧でかしこまったあいさつにするのが一般的です。
また、自社を代表していることを考慮する必要があります。冒頭では会社名から名乗り、自社との日ごろの付き合いに対する感謝も含めます。更に、これまでの関係や今後の協力関係に触れ、自身の意気込みを簡潔に加えることで、力強く印象に残るあいさつになります。
株式会社〇〇の〇〇(氏名)と申します。平素より格別のご高配を賜り、誠にありがとうございます。このたび〇〇(部・課など)・〇〇(役職)を拝命いたしましたので、謹んでごあいさつ申し上げます。
以前は〇〇(以前の部・課など)にて〇〇(業務内容)を担当しており、在任中は格別のご厚情を賜り、厚く御礼申し上げます。
今後は異なる立場となりますが、社内外の皆さまとの連携をより一層深め、共に発展していけるよう尽力してまいります。微力ではございますが、何卒変わらぬご指導・ご支援を賜りますようお願い申し上げます。 |
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続いて、メールでの着任あいさつの例文を紹介します。すぐに直接あいさつするのが難しい場合などはメールを使うことが多いですが、表情や声色が伝わらないことも踏まえて好印象なあいさつメールになるよう意識しましょう。
メールでの着任あいさつでは、基本的にはスピーチよりも簡潔な内容にまとめます。また、通常のビジネスメールと同様、自身の電話番号やメールアドレスといった連絡先を添えるのもマナーです。
また、正式な発表があれば着任日前にメールを送ることもあると思いますが、その場合は着任前の期間でも用件は気軽に連絡してほしい旨を一言記すと親切です。
【件名】着任のごあいさつ
【本文】〇〇部の皆さまへ
お疲れさまです。このたび、〇月〇日付で〇〇(部・課など)の〇〇(役職)として着任いたします〇〇(氏名)です。
管理職として身が引き締まる思いですが、これまでの経験を生かしてチームの皆さまとより良い環境を築いていきたいと考えております。皆さまのお力添えをいただきながら、全力を尽くす所存です。今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。
なお、着任前にご用件・ご相談などがございましたら、下記までお気軽にご連絡いただけますと幸いです。
—————————〇〇(部・課など) 〇〇(役職) 〇〇(氏名)(電話番号)(メールアドレス)————————— |
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社外の取引先に向けたメールでは、会合などでのスピーチと同様に日ごろの付き合いに対する感謝や、相手とのこれからの関係に対する期待に触れます。
なお、直接会う機会がある相手の場合は、「まずは略儀ながら、メールにてごあいさつ申し上げます」「本来であれば直接お伺いしてごあいさつすべきところですが、取り急ぎメールにて失礼いたします」といった文言を添えましょう。社外へのあいさつメールは、原則としてBCCではなく個別送信が望ましいです。
【件名】着任のごあいさつ(〇〇株式会社 〇〇部 〇〇(氏名))
【本文】株式会社〇〇〇〇部 〇〇(氏名)さま
平素より格別のご高配を賜り、誠にありがとうございます。このたび〇月〇日付で、〇〇株式会社 〇〇(部・課など) 〇〇(役職)として着任いたしました〇〇(氏名)と申します。
着任にあたり、ごあいさつを申し上げたくご連絡させていただきました。
これまで以上に貴社のお役に立てるよう誠心誠意努めてまいりますので、今後とも変わらぬご厚誼を賜れますと幸いでございます。何卒ご指導・ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
—————————〇〇株式会社〇〇(部・課など) 〇〇(役職) 〇〇(氏名)(電話番号)(メールアドレス)————————— |
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スピーチ・メールにおける管理職の着任あいさつの例文を紹介しましたが、どのような場面でも以下のポイントを意識できれば好印象を残しやすいです。着任あいさつで良いスタートを切れれば、その後の関係構築も円滑になるでしょう。
どの方法で着任あいさつをするにしても、短く分かりやすい内容を意識することが大切です。シーンによってあいさつの適切な長さは多少変わりますが、朝礼などの口頭であれば、1分から3分、メールの本文は、3段から6段落程度が適しています。冗長でまとまりのない内容では相手も要点がつかめず、あいさつを聞く・読む時間も負担になってしまいます。
ただし、短すぎても内容不足になる可能性があるため、注意が必要です。着任あいさつで自分がもっとも伝えたいことを整理し、それがきちんと伝わる構成にまとめなければなりません。
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着任あいさつは、相手が期待感や安心感、信頼感を持てる内容にしましょう。例えば、自身の不安や不満を言葉にするのは避け、前向きな気持ちを伝えます。過剰に自己アピールをしたり、批判的・命令的になったりせず、謙虚かつ好意的なスタンスを保つことも大切です。
また、スピーチをする場合は口調や表情にも気を配りましょう。内容が良くても、暗い雰囲気や強すぎる口調は相手の気持ちをネガティブにしかねません。リーダーシップを感じる力強さを持ちながらも、明るさや柔らかさ、誠実さや落ち着きがうかがえる話し方が理想です。
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フォーマルな場になるほどあいさつも形式的になりがちですが、その役職に就く人がどのような人物なのか、自分の人となりが分かるような内容を盛り込むと印象的なあいさつを作りやすくなります。テンプレート的な表現ではなく、できるだけ自分の言葉を使いましょう。
自分がどのような印象を与えたいかを考え、あいさつをするシーンに合わせてオリジナルな内容を含めます。スピーチの場合は、主要な内容と話す順番のみを決めておいて、細かな部分は実際に話す際にアレンジするのもおすすめです。
自分が着任あいさつをする場合だけでなく、あいさつメールが送られてきた場合の対応についても解説します。あいさつメールには早めに返信するのがマナーです。相手との関係性を考慮して返信内容を調整しましょう。
着任あいさつメールへの返信では、着任に対するお祝い・これからの自分との関係・活躍を祈る気持ちが主な構成となります。
ここでは、管理職に着任した上司のもとでこれから働く場合の返信例を紹介します。お世話になった上司が異動する場合は、これまでの感謝の気持ちも伝えると良いでしょう。
〇〇部長
お疲れさまです。〇〇です。
このたびは〇〇部 部長へのご着任、誠におめでとうございます。ごあいさつのメールをいただき、ありがとうございました。
〇〇部長からはこれまで多くのことをお教えいただき、また経験させていただきました。現在の私があるのも、〇〇部長のおかげです。
新しい体制のもと、私も〇〇部の更なる発展に貢献できるよう尽力してまいります。今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
〇〇部長のますますのご活躍を心よりお祈りしております。
—————————〇〇(部・課など) 〇〇(氏名)(電話番号)(メールアドレス)————————— |
同僚や部下が管理職に着任した場合は、上司の場合よりもややフランクに、相手を褒める言葉や体調などを気遣う言葉を入れると良いでしょう。例えば「どうぞご無理なさらず」と一言添えると、温かみのあるあいさつになります。なお、宛名は「〇〇さん」とするのが一般的です。
〇〇部〇〇さん
お疲れさまです。〇〇です。
このたびは〇〇(役職)へのご着任、おめでとうございます。日ごろから真摯に業務に取り組まれている姿を拝見しておりましたので、今回のご着任を大変うれしく思っています。
これからますます忙しくなると思いますが、くれぐれもお体には気を付けて頑張ってください。私も〇〇さんに力添えができれば幸いです。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
—————————〇〇(部・課など) 〇〇(氏名)(電話番号)(メールアドレス)————————— |
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取引先への返信では、よりかしこまった言い回しを使ってお祝いの言葉や相手への気遣いに加え、今後の良好な関係や相手の活躍を願う気持ちを表現しましょう。
〇〇株式会社〇〇部 部長〇〇さま
平素より大変お世話になっております。このたびは〇〇部 部長ご着任のごあいさつをいただき、誠にありがとうございました。
ご昇進を心よりお祝い申し上げますとともに、今後のますますのご活躍をお祈りいたします。弊社といたしましても、より一層の関係強化に努めてまいる所存です。
今後は更にお忙しくなるかと存じますが、どうぞお体には十分ご留意くださいませ。引き続きご厚誼を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。—————————〇〇株式会社〇〇(部・課など) 〇〇(氏名)(電話番号)(メールアドレス)————————— |
管理職の着任あいさつは、社内外の関係者に自身の姿勢や方針を伝え、第一印象を決める重要なポイントです。自己紹介や抱負を交え、期待感や信頼感を感じさせる内容にまとめましょう。
社内向けか社外向けかなど、シーンによってあいさつの内容や適切な言葉遣いはやや変わってきますが、いずれにしても、分かりやすくポジティブなあいさつにすることが大切です。本記事を参考に、自分らしい着任あいさつができるようにしましょう。
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監修:谷所 健一郎
キャリア・デベロップメント・アドバイザー(CDA)/有限会社キャリアドメイン 代表取締役
1万人以上の面接と人事に携わった経験から、執筆、講演活動にて就職・転職支援を行う。ヤドケン転職塾 、キャリアドメインマリッジを経営。主な著書「はじめての転職ガイド 必ず成功する転職」、「転職者のための職務経歴書・履歴書・添え状の書き方」、「転職者のための面接回答例」、「転職者のための自己分析」(いずれもマイナビ出版)ほか多数。