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CMOは、企業のマーケティング戦略を統括する責任者です。サービスを成長させるための戦略を立て、商品やブランドの価値を高める役割を担います。
本記事では、CMOが誕生した背景やCEOとの違い、主な業務内容を分かりやすく解説し、現職から目指す場合や未経験からキャリアを築く方法など、CMOになるための具体的なステップも紹介します。
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Contents

CMOは「Chief Marketing Officer」の略称で、日本語では「最高マーケティング責任者」を意味します。ここではCMOの役割と、この役職が誕生した背景を解説します。
CMOは、企業のマーケティング戦略を統括する責任者として、市場における競争力や事業成長に直結する「顧客と市場の動き」を管理する重要な役割を担っています。
経営陣の一角として、市場分析・ブランド戦略・顧客価値の創出といった観点から経営全体を見渡し、企業の成長につながる戦略を立案します。単なる広告やプロモーションの管理にとどまらず、事業戦略そのものをマーケティング視点からけん引する中核的なポジションがCMOです。
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CMOという役職は、1980年代からアメリカで登場し、広く普及し始めました。当時は市場のグローバル化が進み、企業はより広い市場で競争力を確保する必要がありました。
このような状況の中、顧客のニーズ分析やブランド戦略、商品開発といったマーケティング活動を経営レベルで統括する役割が求められたため、CMOを設置する企業が増加しました。
その後、インターネットの普及によりマーケティングのデジタル化が進み、データ活用やオンライン広告、SNSマーケティングなど新たな専門領域が急速に広がったことで、マーケティング責任者の重要性は増していきました。
近年は、消費者の購買行動が多様化・高度化し、ニーズが細分化していることから、日本国内でもマーケティング全体を経営視点で統括するCMOの存在が注目を集めています。
【キャリアアドバイザーからひと言】 |
CMOの採用ニーズ
CMOの採用ニーズは、ますます高まっています。その背景には、消費者のニーズの多様化や購買行動の高度化、デジタルマーケティングの普及などがあり、企業は広告や販促の管理にとどまらず、経営戦略に直結するマーケティングを推進できる人材を求めています。
具体的には、ブランド戦略や市場分析、商品開発、顧客体験の向上など幅広い領域を統括できる能力が重視されます。また、データ活用やDX推進の知見を持ち、組織横断的にマーケティング施策を展開できることも求められます。
そのため、経営陣の一角として経営視点を持ち、成長戦略を主導できるリーダーシップが重要視されており、特に変化の激しい市場環境下で即戦力として活躍できるCMOの需要が高まっています。 |
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CMOと混同されやすい役職としてCEOやCOOが挙げられますが、それぞれ担う役割は異なります。
CEOはChief Executive Officerの略語で、企業の最終的な意思決定を行う「最高経営責任者」であり、会社全体の方向性やビジョンを示し、組織を導く最重要ポジションです。
COOはChief Operating Officerの略語で、「最高執行責任者」として、CEOが示した経営方針に基づき、日々の業務運営や事業活動を統括・管理します。企業内でCEOに次ぐ重要ポジションと位置付けられています。
そのほかにも、CxOで示される役職には次のようなものがあります。
CTO(Chief Technology Officer) |
最高技術責任者 |
CIO(Chief Information Officer) |
最高情報責任者 |
CFO(Chief Financial Officer) |
最高財務責任者 |
CLO(Chief Legal Officer) |
最高法務責任者 |
CSO(Chief Strategy Officer) |
最高戦略責任者 |
CRO(Chief Risk Officer) |
最高リスク責任者 |
CHRO(Chief Human Resources Officer) |
最高人事責任者 |
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国内でも注目されつつあるCMOですが、現状、日本ではどの程度普及しているのでしょうか。ここでは、日本におけるCMOの設置率とCMOの今後について解説します。
2019年に日本マーケティング学会が公表した資料によると、日本国内でCMOを設置している企業の割合は8~11%程度でした。
業種ごとに違いはあるものの、最も設置率の高いゴム製品業でも25%にとどまっており、設置率が1割に満たない業種も多く見られます。このことから、日本国内でCMOを設置している企業は、現状それほど多いとは言えない状況です。
【出典】日本マーケティング学会「日本型 CMO の現状と展望」
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マーケティング先進国のアメリカでは「マーケティング=経営の中核」という意識が強く、マーケティングは企業戦略において欠かせないものとして扱われています。
一方、日本ではマーケティングを「広告」や「販促」といった、実務レベルの限定的な業務として捉える企業が依然として多く、経営戦略とマーケティングを結び付ける文化が十分に育っていません。
また、かつては「良い商品をつくり、テレビCMなどで大規模に広告を展開する」という販売モデルが一般的だったため、企業はマーケティングよりも製品開発に注力する傾向がありました。
こうした背景から、経営視点で市場を捉えられるマーケターの育成が進まず、CMOが必要とされる組織体制も整いにくかったことが、CMOが浸透しづらい主な要因と考えられます。
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上述のとおり、日本ではアメリカほどデータドリブンマーケティングの導入が進んでおらず、専門的なマーケティング人材の層も厚くないことから、CMOの必要性を企業が認識しづらい構造になっています。
しかし、2019年の日本マーケティング学会の調査では、CMOを設置している企業は未設置の企業に比べ、2016年度から2018年度の2年間で約4.7%高い売り上げ増加効果があると推計されています。これは、CMOの存在が業績向上に寄与している可能性を示すものです。
こうした結果から、今後は日本でも経営レベルでマーケティングを統括するCMOの設置がより広く検討され、重要性が一層高まっていくことが期待されます。
【出典】日本マーケティング学会「日本型 CMO の現状と展望」
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CMOはマーケティング戦略に関する責任者としての役割がありますが、具体的にどのような業務を行っているのでしょうか。ここでは、CMOの主な業務内容を3つ紹介します。
CMOは、企業が掲げるビジョンを踏まえ、市場環境や競合状況、顧客ニーズを分析しながら、どのような顧客に、どういった価値を届けるのかという全体方針を策定します。
商品やサービスの魅力を最大限アピールするには、販売チャネルの選定やプロモーションのタイミングなど、マーケティング全体の方向性を定めるのがCMOの役割です。
また、立てた戦略を机上の計画で終わらせず、広告施策の実施、コンテンツ制作、キャンペーン運用、データ分析を用いた改善などを通じて、経営者視点でマーケティング活動全体を推進・最適化していくことも重要な業務です。
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マーケティング部門には、広告運用、ブランド戦略、コンテンツ制作、データ分析、CRMなど多様な専門領域が存在するため、CMOはそれぞれの機能を適切に連携させながら、同じゴールに向かって進めるよう調整しなければなりません。
また、必要なスキルを持つメンバーを育成したり、チームが意欲的に働けるようコミュニケーション環境を整備したりと、組織づくりの面でもリーダーシップを発揮する必要があります。
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モノがあふれる市場で消費者から選ばれるには、価格や機能だけでなく、ブランディングで他社と差別化を図ることが大切です。CMOは、ブランドイメージを明確に打ち出し、消費者にポジティブな印象を与えることで、企業の信頼性や競争力を高めます。
また、ブランド価値を維持・強化するためには顧客・パートナー企業・株主・メディアなどのステークホルダーと良好な関係を築く必要があります。多様なステークホルダーと連携しながら、マーケティング活動全体を円滑に推進することもCMOの重要な業務です。
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CMOにはどのようなスキルが求められるのでしょうか。ここでは、CMOに必要なスキルと、それを身に付けるための方法を解説します。
CMOは売り上げデータや顧客行動、競合情報などを定量的に分析し、最適なマーケティング戦略を立案しなければなりません。感覚や経験だけに頼るのではなく、客観的なデータを根拠に冷静かつ戦略的に判断できる能力が不可欠です。
このスキルを身に付けるには、まずデータ分析の基礎知識を学ぶ必要があります。統計学やデータの可視化方法などを習得し、実際のマーケティングデータを分析する経験を積むと効果的です。これにより、実践力を高めることができます。
また、顧客行動の変化を追う定期的なリサーチや、ABテストなどの施策検証を繰り返すことで、市場動向を的確に見抜き、戦略に生かせるデータ分析力を身に付けることができるでしょう。
マーケティングは多くの専門領域が関わるため、CMOには部門の垣根を越えて組織を統括するマネジメント力が求められます。
このスキルを身に付けるには、まず小規模なチームやプロジェクトでのリーダー経験を積むことが有効です。タスクの割り振りや進捗管理、メンバーのモチベーション維持など、実務を通じてチーム運営のスキルを身に付けましょう。
また、書籍や研修などでマネジメント理論を学んだり、コーチングやフィードバックを通じて人材育成のスキルを高めることも効果的です。
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CMOは常に経営者目線でマーケティング戦略を立案・実行する立場であるため、幅広いビジネス知識が求められます。また、現代のマーケティングはデジタルが中心であり、データ分析の基盤はIT技術によって支えられていることから、ITに関する知識も必要不可欠です。
こうした力を身に付けるには、MBA取得や経営に関する研修を通して、企業運営の仕組みを体系的に学ぶことが有効です。
加えて、BIツールなどを活用しデータ分析の実務経験を重ねることで、ITを生かした戦略づくりや成果検証のスキルを磨くことができます。ビジネス知識とITスキルを実践の中で組み合わせていくことで、経営に貢献できるCMOとしての能力を高められるでしょう。
【キャリアアドバイザーからひと言】 |
CMOを目指して転職する際の、自己PRのポイント
CMOへのキャリアアップを目指す転職では、戦略的思考力と事業成長への貢献実績を強調することが重要です。自己PRでは、市場分析に基づいた一貫性のあるマーケティング戦略を立案し、全社的な目標達成に結び付けた具体的な経験を盛り込みましょう。特に、データドリブンな意思決定能力や、デジタル変革(DX)を推進した実績は強くアピールできます。
更に、営業部門や製品開発部門など他部署を巻き込んだリーダーシップを発揮し、売り上げや顧客生涯価値(LTV)といったKGIやKPIを大幅に改善した成果を、具体的な数値で示しましょう。
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CMOになるには、主に「現職で目指す」「転職で目指す」「キャリアチェンジして目指す」という3つの方法があります。ここでは、それぞれの方法について詳しく解説します。
CMOを目指す方法の一つに、現職でキャリアを積みながら昇進を狙うルートがあります。この場合、まずはマーケティング部門で実績を積むことが重要です。
具体的には、広告運用、ブランド戦略、データ分析、キャンペーンの立案・実行など多様な業務で成果を出し、経営陣から信頼を得ることで徐々に責任あるポジションへステップアップしていくことが可能です。成果が明確であれば、経営視点での意思決定にも関わる機会が増え、リーダーとしての実力を示すチャンスとなります。
すでに組織の文化や仕組みを理解している環境で、安定的にキャリアを進められるのは大きなメリットです。一方で、ポストの空きが限られている場合があり、スキルや実績があっても希望するタイミングで昇進できない可能性がある点はデメリットと言えます。そのため、昇進の機会を見逃さないよう社内の動向を把握しつつ、スキルアップや社内関係の構築も並行して進めることが重要です。
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現職での昇進が難しい場合は、CMOを求める他社へ転職するという道もあります。
転職エージェントや登録型スカウティングサービス、ヘッドハンティングなどを活用することで、自分に合ったポジションを効率的に探せるほか、企業からオファーを受けられる可能性も広がります。
転職のメリットは、希望するタイミングでCMOやそれに近い役職に就くチャンスがある点です。現職ではポストの空きに左右されることもありますが、転職であれば、より早く経営層としてマーケティングを統括する立場に就くことも可能になります。
一からの信頼構築や、短期間で成果を求められるプレッシャーはあるものの、視野を広げキャリアを加速させたい方にとって、転職は有効な手段と言えます。
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これまでマーケティングの経験がない場合は、マーケティング職にキャリアチェンジするのが現実的なステップです。まずは、デジタルマーケティング、広告運用、データ分析、ブランド戦略などの専門的な業務に携わり、CMOに必要な知識やスキルを身に付けましょう。
未経験であっても、これまでのキャリアで培った経験をマーケティングに生かすことができます。営業職の経験者であれば、顧客目線からの新たな発想を生み出すことができるかもしれません。
戦略立案やチーム統括で実力を発揮すれば、将来的にCMOを目指せる可能性はあります。着実に経験を積み、リーダーシップを発揮することが成功のポイントです。
【キャリアアドバイザーからひと言】 |
CMOになるためのキャリア選択のアドバイス
CMOを目指すには、自分のキャリア状況に応じた戦略的な選択が重要です。現職でマーケティング経験がある場合は、広告運用やブランド戦略、データ分析、キャンペーン立案など多様な業務で実績を積み、経営陣から信頼を得て昇進を目指しましょう。昇進が難しい場合は、CMOを求める他社への転職も有効です。転職エージェントやスカウティングサービスを活用することで、自分に合ったポジションを効率的に探すことができます。
未経験の場合は、マーケティング職にキャリアチェンジし、専門スキルや知識を身に付けることが先決です。営業や企画など過去の経験を生かしつつ、戦略立案やチーム統括で実力を示すことで、将来的にCMOとして経営層に立つ道が開けます。 |
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CMOは、企業のマーケティング戦略を統括し、ブランド価値の向上や市場での競争力強化を担う重要な役職です。現状、日本企業におけるCMOの設置率は低いものの、設置したことで売り上げがアップしたというデータもあり、今後導入する企業は増えていく可能性があります。
CMOの主な業務には、マーケティング戦略の立案・実行、部門マネジメント、ブランディングやステークホルダーとの関係構築、データ分析を通じた意思決定などが挙げられます。将来CMOを目指す方は、データ分析力やマネジメント力を身に付け、自分に合った方法でキャリアを積み重ねていきましょう。
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監修:谷所 健一郎
キャリア・デベロップメント・アドバイザー(CDA)/有限会社キャリアドメイン 代表取締役
1万人以上の面接と人事に携わった経験から、執筆、講演活動にて就職・転職支援を行う。ヤドケン転職塾 、キャリアドメインマリッジを経営。主な著書「はじめての転職ガイド 必ず成功する転職」、「転職者のための職務経歴書・履歴書・添え状の書き方」、「転職者のための面接回答例」、「転職者のための自己分析」(いずれもマイナビ出版)ほか多数。