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CTOは、企業の技術面を統括し、技術戦略の立案や開発体制の構築を担う役職です。急速に進化するテクノロジー環境の中で、技術をどのように経営へ生かすかを考える重要なポジションと言えます。
本記事では、CTOの役割や実態、主な業務内容を解説したうえで、CTOを目指すために必要なスキルと方法を分かりやすく紹介します。
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CTOは「Chief Technology(Technical)Officer」の略称で、日本語では「最高技術責任者」とも呼ばれます。ここではCTOの役割と、企業が設置する理由を解説します。
CTOは、企業の技術戦略に関わる責任者として、成長や競争力に直結する「技術と開発の方向性」を統括する重要な役割を担っています。
技術の視点から経営全体を見渡し、企業価値を高めるための技術戦略を立案・統括します。単に技術開発を進めるだけでなく、どの技術を採用するかの判断や、開発チームの組織運営、エンジニアの育成もCTOの重要な役割です。
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企業がCTOを設置する理由は、技術が経営の中核となる時代において、技術戦略を一元的に統括する必要が高まっているためです。
CTOはアメリカの企業で広く用いられている役職ですが、近年は日本でもICT化の進展や技術の高度化・細分化を背景に導入が進んでいます。
特に、製造業や情報通信業など、技術革新のスピードが速く技術力が経営を左右する業界では、社内に点在する技術や人材を統合して企業全体の競争力を高める必要があります。
そのため、CTOが中心となって技術の方向性を定め、研究開発や組織運営を戦略的にリードする体制を整える企業が増えているのです。
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CTOの採用ニーズ
CTOの採用ニーズは、企業が技術を戦略的資産として活用し、競争力を維持・向上させるためにますます高まっています。特に製造業や情報通信業、AI・デジタル領域のスタートアップなど、技術革新のスピードが速く、経営判断に技術視点が欠かせない業界で強く求められます。
CTOには、研究開発やプロダクト開発の方向性を決定する能力に加え、開発チームの組織運営やエンジニア育成、外部パートナーとの協働など、マネジメント力も必要です。加えて、新技術の動向を把握し、事業戦略に応用できる先見性も求められます。また、技術戦略を経営層と共有し、企業の中長期的な成長をけん引できる視野も重要です。
これらの理由から、経営に直結する技術戦略を統括できるCTOは、今後も採用ニーズが非常に高いポジションであると言えます。 |
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実際、日本国内の企業においてCTOはどの程度普及しているのでしょうか。また、CTOの職位や在任期間についても解説します。
2025年に公表された一般社団法人日本能率協会の資料によると、CTOが専任で任命されている企業は19.4%、ほかの役職と兼務している企業は37.9%であり、合計すると57.3%の企業でCTOが設置されている状況です。
なお、従業員規模別で普及率を比較すると、3,000人以上の企業では専任・兼任を合わせて68.4%であるのに対し、3,000人未満の企業では50%と、大企業ほどCTOの普及が進んでいることが分かります。
ただし、企業全体の普及率は兼務も合わせると過去4年で10%以上増加しており、中小企業も含め、今後もCTOを設置する企業は増えていく可能性があります。
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同資料によると、CTOの職位を「取締役・執行役員」としている企業が44.6%と最も多く、次いで「専務・常務」の28.9%、「副社長」の10.7%という割合でした。
なお、従業員が3,000人以上の企業でCTOに望まれる職位を尋ねると、「副社長」と答えた割合が最も高く36.5%に上りました。
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同資料にて、CTOの平均在任期間を見てみると、「4~5年未満」が最も多く25.6%、次いで「3~4年未満」が23.1%という割合でした。一方で、従業員が300人未満の企業に限ると、10年以上と回答した割合が33.3%で最多となっており、中小企業ではCTOが長期にわたって職務を担っている傾向です。
なお、「本来望ましいとされる在任期間」については、従業員規模にかかわらず、「4~5年未満」が最も多い割合でした。
つまり、CTOの職責や技術戦略の継続性を踏まえると、4~5年程度の中期的な在任期間が適切であるという意識が企業側にあると言えます。
【出典】一般社団法人日本能率協会|CTO Survey 2025「日本企業の研究・開発の取り組みに関する調査」報告書
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CTOと混同されがちな役職にCEOやCIOがありますが、それぞれの役割は異なります。
CEO(最高経営責任者、Chief Executive Officerの略語)は、企業経営の最終的な意思決定を行うトップであり、会社のビジョンや戦略を示し、組織を導く中心的な存在です。
CIO(最高情報責任者、Chief Information Officerの略語)は、企業の情報システムやデジタル戦略を統括する役職であり、ITを活用して経営目標を実現するための方向性を示す役割を担っています。
そのほかにも、CxOで示される役職には次のようなものがあります。
COO(Chief Operating Officer) |
最高執行責任者 |
CFO(Chief Financial Officer) |
最高財務責任者 |
CMO(Chief Marketing Officer) |
最高マーケティング責任者 |
CLO(Chief Legal Officer) |
最高法務責任者 |
CSO(Chief Strategy Officer) |
最高戦略責任者 |
CRO(Chief Risk Officer) |
最高リスク責任者 |
CHRO(Chief Human Resources Officer) |
最高人事責任者 |
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CTOは技術戦略に関する責任者としての役割がありますが、具体的にどのような業務を行っているのでしょうか。ここでは、CTOの主な業務内容を3つ紹介します。
技術戦略を実行するうえでは、「誰が、どのように開発を進めるか」が極めて重要です。そのため、事業に必要なスキルやマインドを持つ人材を採用し、スキルを伸ばしながらチームとして機能させることはCTOの重要な業務です。
特に、スタートアップでは組織の基盤づくりから始めなければならないため、CTO自らが採用活動を行ったり、経験の浅いエンジニアを直接育成したりする場面が多くなります。
限られた人材とリソースの中でスピード感をもって開発を進めるには、CTOが技術面だけでなくチームビルディングやメンバーの成長管理にも深く関与することが求められます。
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CTOは、企業が目指す方向性を実現するために「どの技術を選び、どのように活用するか」を見極める、いわば技術の選定を担います。
新しい開発手法やシステム構成、使用するツールなどを判断し、効率的かつ将来性のある技術基盤を整えることが求められます。こうした技術選定と方向付けにより、組織全体が一貫した技術方針のもとで開発を進められるようになるのです。
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技術を選定・管理するだけでなく、経営的な視点で事業の成長をけん引することもCTOの重要な業務の一つです。技術戦略を経営方針に反映し、経済的な価値を創出する役割も担います。
例えば、システム運用の効率化やクラウド環境の最適化、技術的負債の管理によるコスト削減、更に開発プロセスの改善や自動化ツールの活用による生産性向上などが挙げられます。
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CTOにはどのようなスキルが求められるのでしょうか。ここでは、CTOに必要なスキルに加えて、そのスキルを身に付けるための方法を解説します。
将来的に価値を生む技術を選定するには、現在の状況だけでなく、市場や競合、顧客ニーズの変化を的確に捉える洞察力が必要です。短期的ではなく、長期的な成長を見据えてシステムやサービスを考えることが、CTOに求められる役割です。
CTOに必要な洞察力を身に付けるには、まず幅広い情報収集が欠かせません。業界動向、技術トレンド、競合の動き、顧客の声を定期的にチェックする習慣を持つことが大切です。
また、収集した情報を単に知識として蓄えるのではなく、過去の成功・失敗事例と照らし合わせながら分析するのも有効です。
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技術面の課題は複雑で多面的であることが多く、感覚や経験だけでは、適切な判断が下せない恐れがあります。そのため、問題の原因を正確に特定し、優先順位や解決方法を冷静に導き出す論理的思考力が必要です。
論理的思考力を身に付けたい場合は、問題を構造化して整理することを意識しましょう。例えば、複雑な課題を小さな要素に分解し順序立てて分析したり、仮説を立てて検証するサイクルを回すなどが有効です。
更に、原因と結果を整理するロジックツリーや、意思決定の選択肢を比較するコストベネフィット分析などのフレームワークを活用するのも効果的です。
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CTOは、技術を経営資源として活用し、経済的な価値を創出していくことが求められます。そのため、技術施策がどの程度の利益や事業成果に結び付くかを常に意識するビジネス思考が必要です。
ビジネス思考を身に付けるには、まず経営や市場の仕組みを理解することが不可欠です。収益構造やコスト構造、KPI(重要業績評価指標)などを学び、技術施策と事業成果の関係性を把握しましょう。
更に、各部署と密に連携し、施策ごとの費用対効果や市場インパクトを評価する経験を積むことで、技術とビジネスを統合的に考える力が養われます。
【キャリアアドバイザーからひと言】 |
CTOを目指して転職する際の、自己PRのポイント
CTOを目指して転職する際の自己PRでは、技術力と経営視点の両方をバランスよく伝え、組織や事業に与えるインパクトも示すことが重要です。
まず、過去の開発経験やプロジェクトでの成果を具体的に示し、専門的な技術力や問題解決力を裏付けます。更に、技術を事業成長に結び付けた経験や、チームマネジメント、部門横断的なプロジェクト推進など、組織運営力やリーダーシップを強調することで、経営層として技術戦略を統括できる資質をアピールできます。
また、新技術の選定や導入による効率化や価値創出の実績を示すと、戦略的な思考力や意思決定力も印象付けられます。技術力と経営視点を具体的に結び付ける自己PRが求められます。 |
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CTOが最適な技術を選び、高品質な戦略を立てても、実際に実現できるかはエンジニアチームの力にかかっています。そのため、CTOにはチームをけん引し、メンバーの能力を引き出すリーダーシップが求められます。
まずは、チームのメンバー一人ひとりの強みや課題を理解し、適切な指示とフィードバックを与えながら、協力して目標を達成できる環境を作ります。また、意思決定の過程やビジョンを明確に示し、チームが自律的に動けるように導くことも大切です。そのうえで、最新技術への継続的な学習を奨励し、技術的な挑戦を通じてメンバーが成長できるよう、戦略的なコーチングを行うことも重要な役割です。
そして、自ら手を動かして課題解決に取り組む姿勢を見せたり、失敗を共有して改善策を考える文化を作ったりすることで、メンバーからの信頼を得られるようになるでしょう。
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CTOになるには、主に「現職で目指す」「転職で目指す」「起業して目指す」という3つの方法があります。ここでは、それぞれの方法について詳しく解説します。
現職でスキルを高めつつ、周囲からの信頼を積み重ねていくことで、より大きな役割へと段階的に近づくことができます。組織の文化や事業構造を理解している環境であれば、落ち着いてキャリアアップを目指せるでしょう。
一方で、CTOは単なる技術の専門家ではなく、経営戦略に携わるポジションでもあるため、実績を重ねただけでは昇進につながらない可能性があります。このため、経営層に対し技術戦略が事業成長にどう貢献するかを積極的に提言するなど、技術部門の枠を超えた貢献を目指すことが不可欠です。
また、社内でCTOポストが空いていない場合、相応の能力があっても昇進のタイミングを待たなければならず、キャリアが停滞してしまう可能性もあります。
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CTOポストを求める企業へ転職するという手段もあります。
転職エージェントや登録型のスカウティングサービス、ヘッドハンティングサービスなどを利用すれば、自分のスキルや経験に合ったポジションの情報を得たり、企業から直接オファーを受けることができます。
新しい組織文化に適応しなければならず、企業選びを誤ると期待した裁量が与えられないなどのリスクもありますが、現職で昇進を待つのとは異なり、自分が望むタイミングでCTOや近いポジションに就けるのは大きなメリットです。
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明確なビジョンや実現したい技術構想を持っている方は、メンバーを集めて起業し、自らCTOの役割を担うという選択肢があります。
組織の初期段階から技術基盤や開発プロセスに携わることができるうえ、事業成長に直結する意思決定も行えるなど、短期間で多くの経験を積めるのは起業ならではの魅力です。
一方で、起業の初期段階では資金や人材が十分にそろわないことが多く、資金調達・営業・マーケティングといった本来の専門領域とは異なる業務を担わなければならない場面も出てきます。
また、事業が思うように進まない場合は、収入の不安定さや組織運営のプレッシャーを直接負うことになるため、起業に挑戦する際はメリットとリスクを十分に考慮し、自分や家族のライフプランも含めて慎重に判断することが大切です。
【キャリアアドバイザーからひと言】 |
CTOになるためのキャリア選択のアドバイス
CTOを現職で目指す方法は、組織文化や事業構造を深く理解できる安定性がある反面、ポストの空き待ちや技術以外の経営視点の獲得が課題となります。一方、転職は即座にCTOポジションを得られる可能性がありますが、新しい組織への早期適応力と、企業のCTOに対する期待について、技術マネジャーか、経営戦略への関与かを正確に見極める洞察力が必要です。リスクが高い起業は、明確なビジョンと技術構想がある場合、初期段階からすべてを決定できる大きな裁量を得られますが、技術以外の多岐にわたる業務と不安定な収入を許容しなければなりません。
どの道を選ぶにせよ、CTOには技術力にとどまらず、事業成長へのコミットメントと人を動かすリーダーシップが不可欠であることを理解し、それに必要なスキルを逆算して磨き続けることが成功のポイントです。 |
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CTOは、企業の技術戦略を立案し、最適な技術選定や開発組織のマネジメントを通じて事業価値を高める役職です。CTOを設置する企業は増加傾向にあり、特に大企業では設置率が7割近いという調査結果もあります。
CTOになるには、現職で実績を積む、外部企業へ転職する、あるいは人材を集めて起業するなどの方法が挙げられます。CTOを目指す方は、それぞれのメリットとリスクを理解したうえで、自分に合ったキャリアを構築し、技術力と経営視点を磨きつつ、将来的な事業成長に貢献できるCTOを目指しましょう。
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監修:谷所 健一郎
キャリア・デベロップメント・アドバイザー(CDA)/有限会社キャリアドメイン 代表取締役
1万人以上の面接と人事に携わった経験から、執筆、講演活動にて就職・転職支援を行う。ヤドケン転職塾 、キャリアドメインマリッジを経営。主な著書「はじめての転職ガイド 必ず成功する転職」、「転職者のための職務経歴書・履歴書・添え状の書き方」、「転職者のための面接回答例」、「転職者のための自己分析」(いずれもマイナビ出版)ほか多数。